再び債券市場に目を向ける投資家

アメリカで新型コロナウイルス第二波感染が広がる中、債券市場では景気回復の鈍化を織り込む動きが強まっています。
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米国・5年債利回りは過去最低まで低下。

 

米国債ETF
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6月と7月に史上最高レベルの巨大な出来高を形成、大規模な資金流入が確認されています。

 

堅調な米国株式指数にも関わらず投資家は株式を回避し、代わりに社債や総合債へ資金を移していることが分かります。
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これらの動きは今後の重要イベントであるワクチンの最終試験や大統領選を警戒した心理が反映されたものであると思います。
今後の債券市場について『ゼロ金利によりヘッジ効力が弱くなる』という懐疑的な見方もあれば、『現在のFF金利金利環境を正当化するものであり、米債流入は加速する』という楽観的な見方もあります。

金鉱株、銀、銅の長期チャートの変化

金価格の上昇により貴金属全般が買われています。
特に安く放置されていた金鉱株、銀、銅に見直しが入り、金価格との連動を強めています。

 

金鉱株(HMY) 月足チャート
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2013年から続く低迷相場は時間をかけて鍋底を形成。
底値入りを匂わす相場で重要になるのは出来高です。
つまり、転換点というのは出来高を伴って起きなければシグナルと見なされない場合があります。
出来高のトレンドを見るオンバランスボリュームは強気を示唆しています。

 

ETF(SLV) 月足チャート
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金鉱株と同様、これまで安く放置されてきた銀ETFにも底入れシグナルである、鍋底を形成、出来高もしっかりと伴っています。

 

ETF(CPER) 月足チャート
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ダブルボトムを形成しているように思えます。
オンバランスボリュームは前回ピークを突破。


金鉱株、銀、銅が買われているのは需給によるものではなく、金価格のいちじるしさを反映したものだと思います。
金鉱株は例外ですが、銀と銅は需給関係がレートを決定していたので、今後の過熱次第により、需給との乖離が生じる可能性があります。

有効的な移動平均は2つの論理から成る

移動平均はトレンドやサイクル、投資心理を見る指標として有効的なツールです。
それでは移動平均の期間はどのようにして定めればいいのか?
それを議論するうえで有効的、もしくは効果的な移動平均はどのような論理から成り立っているのかを理解する必要があります。

 

移動平均が効果を発揮する時というのは以下のパターンです。
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相場は移動平均の方向性に従い、時には下値支持線、上値抵抗線の役割を担っている。
しかし、移動平均の期間や相場サイクルによっては効果を発揮しない時もある。

 

そこで移動平均が効果を発揮する時の2つの前提条件を知る必要がある。


⑴ 市場サイクルと波長が合う時
常にうまく働く移動平均は存在しません。
なぜなら市場それぞれサイクルがあり、移動平均の期間と市場サイクルの波長が合った時に移動平均の効果が発揮されやすい。
例えば米国株式指数は20週間(140日)のサイクルを持つと言われているので、その場合、偶数の調和関係にある移動平均で構成した方が良いことになります。
(例.10日、20日、40日移動平均線…)

 

自己実現的な予測が生まれる時
自己実現的な予測とは「予測」に基づき、皆が同じ行動をすることで、実際にその予測が実現してしまう現象です。
これは⑴のサイクル論とは違い心理的な要素が強い。
そのため、自己実現的な予測を移動平均に用いるには市場ごとに精通した移動平均を使うことが最も有効的です。
簡単に言えば皆が使っている移動平均を使うことで自己実現的な予測は生まれやすいということです。
米国株式指数の場合だと50日移動平均線と200日移動平均線が中期、長期トレンドのベースとして広く使われています。

ドラマ『ビリオンズ』、テイラーの印象的な言葉

ヘッジファンドを主題としたドラマのビリオンズに出てくるアナリスト、テイラー・メイソンが言った印象的な言葉です。

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゛株は生き物と似ています。例えばスズメ
私達はスズメの抽象概念を作ることで、その行動を予測することが出来るのです。
渡りのパターン、風向き、天候、その他の条件からね。
株も同じでいくつかの上場投信から得られる情報を組み合わせれば、特定の株を表す抽象概念を作れます。
その抽象概念から株価の動きを予測することができます。
株の性質は抽象概念に従います。゙

 

ビリオンズはウォール街の大物も脚本に携わり、金融業界のリアリティーが追求されている見応えのあるドラマです。

Netflixで見ることができます。

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中国は最大貿易相手国を米国、欧州からASEANへ

14日に発表された6月貿易収支は予想を大きく上回り+464億ドル。
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内訳は輸出(前年同月比)0.5%増の2135億ドル輸入(前年同月比)2.7%増の1671億ドルだった。

 

6月までの貿易額を見るとASEANは前年同期比+5%、これまで最大の貿易相手国であったEUは前年同期比−5%アメリカは前年同期比−10%と大きく減っている。
アメリカとはフェーズ1貿易協議の合意により米農産品の輸入を増やすことが取り決めだったが、ASEANと比べて偏りが見られる。


さらにアメリカによる対中半導体規制により、半導体の対ASEAN貿易が加速、伸び率は3.2%上昇している。
中国は半導体の生産拠点をASEANに移転しており、部品をASEANの工場で作り、それを中国へ輸出している。
米中関係の悪化により貿易供給網を欧米からASEANに構築する試みがデータに反映していると思われる。

中国で内外から資金を呼び込むキャンペーンが始まった

6日上海総合指数が急騰したことにより、アメリカに上場する中国株ETFも9.5%上昇した。
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1日の上昇率は2015年以来となっている。

 

中国当局は香港を巡るどさくさで中国市場の資金流失が続いていたことの対策として、中国国内で上場する企業を推進などの施策が株式市場でも好感される格好となっている。アメリカと同様中国でも株式投資ブームが高まっており、個人投資家の資金を引きつけることも資金呼び込みキャンペーンの狙いである可能性もある。

 

失業率
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最悪期の6.2%から現在は5.9%まで低下。
依然高い水準で警戒は必要だがピークを脱した可能性がある。

 

消費者信頼感指数
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新型コロナウイルスにより弱いデータが反映している。
欧米のような手厚い消費者支援がなされていないので、しばらく低迷した数字が続く可能性がある。

 

製造業PMI
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中国では他国より早く製造業PMIがV字回復している。
2カ月連続プラス成長しており、どの国と比べても評価の高い数字だ。

 

外貨準備
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2-3月には外貨準備の減少が際立っていたが、5月6月にかけて急ピッチに増やしている。


上記統計を総合的な観点で評価するならば、依然対米によるリスクはあるものの、着実に回復しているのが分かる。
6日中国株の上昇は過剰流動的であるという指摘もあるが、世界の市場を見てもオーバーバリュエーションしていない市場の方が少ないのではないか、と思っている。
しっかりと時期を理解すれば、今の局面というのはオーバーバリュエーションを利用した方が投資として得策である可能性が高いと思う。

トレンドは明白なシグナルが出るまで継続する

「トレンドは明白なシグナルが出るまで継続する」
これはテクニカルアナリストのジョン・J・マーフィーの言葉だ。
「現在のトレンドが未来でも継続する」という考え方であり、この手法は年月を経た今でも多くの投資家から熱烈に支持を受け続けている。

 

私もこの教則に乗っ取った投資をしており一般的にいうチャーチストだ。


今回はジョン・J・マーフィーの教えにあるトレンド分析についてお話していこうと思う。
「トレンドは明白なシグナルが出るまで継続する」という教則を理解するためには、トレンド分析の本質を考える必要がある。

 

 

S&P500指数ETFを例に説明していく。
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トレンド分析で重要になるのは主要トレンドで、主要トレンドというのは短くて1年、通常は数年以上続くトレンドラインのことだ。
S&P500指数ETFの場合は前回の景気後退から主要トレンドラインを引くことが出来る。

 

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相場のモメンタムを計る上で目安となるのは「トレンドラインの攻防回数」であり、強いモメンタムと判断できるまでには3度のトレンドライン攻防の実績が必要になる。
次に重要になるのは赤いライン、つまり新波動入りした回数だ。
こちらも主要トレンドで3回以上赤いラインを突破していれば、「現在のトレンドが未来でも継続する」の根拠となる。
3月に大きな下落を受けて一時トレンドラインを割る事態となったが、過去に3度のトレンドライン攻防や3度の新波動を経験している相場なので、引き続きトレンドは継続して再び新波動入りするということが想定できる。

 


トレンドの段階
主要トレンドは通常3つの段階からなっている。
第一段階では悪いニュースが飛び交っているが相場はすでに織り込まれたと考える段階。


第二段階は景気や投資心理が改善して市場の参加が活発化する段階。


第三段階はニュースや新聞が強気に傾き、個人投資家の参加も増える段階


第三段階は最終段階でもあり、第一段階で参加した投資家が利食いするタイミングでもある。

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