米英・長期金利低下、ドイツは上昇?今後のユーロは?
新型コロナウイルスによる経済の影響は計り知れない。
このような状況なので各中央銀行は大規模な金融緩和に踏み出した。
アメリカとイギリスは政策金利をゼロに引き下げ、ドイツ(ECB)はTLTRO3をマイナス1%(実質利下げ)に引き下げた。
さらに各国は大規模な量的緩和と政府による経済支援に踏み切った。
各国の大規模な金融緩和によりアメリカ、イギリスの10年債利回りは低迷。
しかし、ドイツの10年債利回りは上昇している。
ここで各国の10年債利回りを見てみよう。
(米10年債利回り)
(英10年債利回り)
(独10年債利回り)
ドイツ10年債利回りだけ上昇している理由は定かではないものの、要因になっている可能性がある材料が2つある。
⑴ コロナウイルスの感染が減っている
⑵ ユーロ高
経済再開したドイツでは未だに感染者は増えているものの、ピークアウトした可能性は高い。
もう一つがユーロ高だ。ドルやポンドに比べて最近のユーロは強さが目立つ。
ドル、ポンド、ユーロの比較を見てみよう。
(ドル円)
指標はボリンジャーバンド。
現在はボリンジャーバンドが狭くなっている局面、つまり値幅も限られる可能性が高い。
(ポンド円)
ポンドも同じくボリンジャーバンドが狭くなっている局面なので、方向感が見える兆しは今のところない。
(ユーロ円)
ユーロはボリンジャーバンドの上端を突破している。
未だレジスタンスをテスト段階中だと思うが、強い上昇はボリンジャーバンドが広くなる、つまりユーロの方向感が定まる可能性がある。
ユーロというのはドルなどの取引の多い通貨のモメンタムが弱くなると、マネーフローを獲得する傾向があるため、現在はユーロ高となっている可能性が高い。
「今は割高?」と考えるだけ無駄?
新規失業保険申請件数は8週間で3600万件を突破して、失業率は14.7%にまで上昇した。
ウォ―ル街のいたる所でも「実体経済と相場がかけ離れており割高だ」という声が出ている。
S&P500は3月の安値から31.5%も上昇している。
コロナショックによる下落幅をS&P500は半分戻しているが、相場のように実体経済も急回復、もしくは回復の見通しが立っているわけではない。
そのため現在の相場が「割高だ」と思うのも分かる。
しかし、相場はそんなに単純ではない。
景気回復の兆しが見えなくてもFRBや政府による資金供給により株価が買われる、ということもあるので、実体経済に対して割高であっても、公的資金の供給量を考えると妥当にも思える。
つまり、現在の相場が割高かどうかを考えるのは時間の無駄な可能性が高い。
私も含め、相場モメンタムを重視する投資家からすれば、現在が割高かどうかは関係ない。
S&P500長期チャートに2008年金融危機の安値からトレンドラインを引いてみると、現在はトレンドラインより上にある。
モメンタム投資理論でいうと全く慌てる必要のないチャート水準だ。
モメンタム投資は現在が割高で買われ過ぎているという考え方は一切持たないので、デッドラインが決まっている。
それはトレンドラインを割ってしまうことだ。
まとめると現在の相場のように実体経済に対して割高であっても、公的資金の供給量を考えると妥当である可能性もあるので、現在が割高かどうかの議論は多くのケースで時間の無駄であり、その議論のせいで投資チャンスを逃したり、出遅れたりする。
ウォ―レン・バフェットが懸念した公的マネー
ウォ―レン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは第一四半期に約5兆円(497億ドル)の純損失を出しました。
現在多くのメディアが報道しており、投資家の間でも話題となっています。
注目されているのはバークシャーが投資していたのは航空株です。
いうまでもなく航空業界は新型コロナウイルスによる影響で大打撃を受けています。
バークシャーは安くなった航空株を買って、1カ月後に手放しています。
ウォ―レン・バフェットの投資スタイルは長期投資で『喜んで10年間株を持ち続ける気持ちがないのなら、たった10分間でも株を持とうなどと考えてはいけない』という有名な言葉を残しています。
しかし、今回航空株を買って、1カ月後に手放すという異例な行動に出ました。
ウォ―レン・バフェットが航空株を手放した理由はキャッシュが不足しているからではありません。
むしろバークシャーのキャッシュは1240億ドルと過去最高です。
航空株を手放した理由について、ウォ―レン・バフェットはこのように述べています。
『自由市場が複雑になった』
ウォ―レン・バフェットがいう「複雑」というのは公的マネーです。
アメリカ政府の2兆ドル経済支援や、FRBの無制限金融緩和による数兆ドルの流動性により、『自由市場が複雑になった』と述べています。
一般的に言えば「公的マネー」といわれる、政府や中央銀行の経済支援や金融緩和は打撃を受けた産業の助けになるので、投資という意味ではポジティブです。
しかし、ウォ―レン・バフェットは公的マネー流入により、「判断が変わった」という一般の投資家とは真逆の考えを持っているところが非常に興味深いです。
投資家の現金ポジションは2008年の水準で止まる可能性
今週の新規失業保険申請件数は383万件と予想の350万件を上回り、これで過去6週間の申請件数は3000万件を超えました。
数字だけ見れば現在の経済状況に目を背きたくなりますね。
経済統計の弱い数字に反しリスク資産の値戻りが目立ちます。
少し前のデータになりますが、投資家の現金ポジションは2008年の増加量で止まっていることが分かります。
一般的に投資家の現金ポジションが積みあがることは、リスク資産への撤退を意味しています。
3月に現金ポジションは急速に積み上がり、4月半ばには2008年の現金ポジション量で止まる。
現金ポジションが高止まりして、これから縮小するとすれば資金は株式へ向かう可能性が高くなります。
ナスダック 週足チャート
3指数の中でも景気関連銘柄が多いナスダックは値戻しスピードも速いです。
現在、急落分の約65%を戻しています。
モメンタム指標は中立以上にあり、MACDは強気のシグナルクロスを形成しに行っている可能性があります。
早ければ今後数カ月で最高値を更新する可能性も十分考えられると思います。
現在の株価のレートがファンダメンタルズと乖離していると指摘がありますが、株価は長くて半年や1年先まで織り込むことがあるので、現在のレートは全く不思議に思っていません。
原油:買いシグナルと売りシグナル
13日、OPEC+で過去最大の日量970万バレル減産で合意。
9日に暫定合意された日量1000万バレルより下回る減産量となりました。
メキシコのサウジが求める削減量より少なかったことや、アメリカが協調減産に参加しなかったことが背景にあります。
市場参加者からは「(新型コロナウイルスによる)需要減に対して日量970万バレルの削減量では足りない」という声が多いです。
恐らくOPEC+も第二弾、第三弾協議という形で徐々に削減していく流れで一致している可能性があります。
14日サウジ・エネルギー相は「6月の協議でさらなる減産を進める」意向を示しており、トランプ大統領も「日量2000万バレルの削減を目指す」とツイートしています。
(原油 日足 テクニカルチャート)
原油のテクニカルチャートで買いシグナルと売りシグナルが出ています。
買いシグナルとなっているのは1のポジティブダイバージェンス、売りシグナルとなっているのは2のCCI(商品チャネル指数)100の突破です。
今回は20日移動平均線(赤色)の戻りとCCIの「買われ過ぎ」がマッチしたような形で売りシグナルとなりました。
(週足 テクニカルチャート)
反転シグナルの指標として人気なMACDでは、まだゴールデンクロスは見られません。
(ルーブル・米ドル 日足 テクニカルチャート)
原油市場の行方に左右しやすいルーブルはMACDのゴールデンクロスと、20日移動平均線(赤)のブレイクで底入れが確認できています。
今後何度か重ねるOPEC+会議で、もし、トランプ大統領の言いうような「日量2000万バレル削減」を目指すなら、サウジが戦略的に増産した約1200万バレルを超える削減量となります。
各国が景気後退入りしていく中、原油需要は目減りしていく訳なので、日量2000万バレルの減産はある意味必要なのかもしれません。
そうなれば原油は大きく切り返し値上がりしていくシナリオになります。
因みに過去、全ての景気後退で原油は急騰しています。
過去最大の大幅減産?織り込めない市場
4月2日、トランプ大統領のツイートが話題を呼びました。
『世界で日量1000万バレルの減産目指す』
このツイートをキッカケに大幅減産の期待感が広がり、原油相場は一時30%急騰。
大幅減産に対して、悲観と楽観が混じるようなムードになりました。
大幅減産に関してOPECの中心であるサウジアラビアは、減産することの条件として、アメリカやカナダ、メキシコなど外国の減産協力が必要と述べています。
ロシアもサウジアラビアと同じ意見で、アメリカも減産に参加するべきとの見解を示しており、4日にはアメリカが減産に参加しないならロシアはサウジアラビアとの減産に合意しないとまで言っています。
しかし、多くのシェール企業が油田開発を手掛けるアメリカが減産に参加することは難しいことを理由に、アメリカは減産の参加には消極的です。
アメリカは大幅減産に期待しているものの、「サウジとロシアで」と協調しています。
ヘッジファンドや投資家が安くなった原油の買い戻しチャンスを狙っていると思います。
私自身も同じです。
しかし、サウジとロシア、アメリカの意見が一致しておらず、現段階ではどちらかが譲歩しなければ、減産合意はできないと思います。
目先重要になるのは9日に予定されているOPEC+のテレビ会議です。(6日から9日に延期)
そこで減産に関する口先合意があるかもしれません。また決裂もあり得ます。
もし、日量1000万バレルの減産が実現すれば、それは原油市場全体の10%に及びます。
原油チャート 日足
短期トレンドの節目としていた20日移動平均線(赤)をブレイクアウト。
減産合意がなされれば、50日移動平均線(黄色)がある40ドル付近まで上昇する可能性があります。
しかし、世界では新型コロナウイルスの影響で原油に対する需要が激減しており実需的な観点から50ドルは一つのレジスタンスとなる可能性があり、減産合意の実現で40ドル前後まで上昇すれば空売りを狙う投資家が多くなると考えています。
チャートとファンダメンタルズ どちらが重要?
あなたが保有する投資ポジションが含み損を抱えてしまいました。
その時のチャート状況はこんな感じです。
この状況であなたはどうしますか?
恐らくこの状況で以下2点いずれかの行動に出ると思います。
1. 急いで損切りする
2. 急いでファンダメンタルズを確認する
予想と反した値動きなら直ぐにポジションを処分すればいいですし、長期的なファンダメンタルズ見通しが明るければドッと構えて値戻りを待てばいいのですが、この期におよんでファンダメンタルズを確認することは大抵意味のないケースが多いのです。
つまり、ポジションを損切り確定したくない一心から、ファンダメンタルズを調べて「ポジション保有は間違っていない」という根拠を見つけたい、という心理状態から2の行動に出るケースが多くあります。
それはとても危険なことです。
ファンダメンタルズ分析は冷静沈着にやらなければいけない訳ですが、上記のような心理状態だと自分に都合の良い情報だけを無意識に集めてしまい、損切りしなければいけなくても、保有するという間違った決断をしてしまいます。
万が一ファンダメンタルズ見通しが良くても、マーケットのサイクルに飲まれてしまう可能性があります。
良好なファンダメンタルズでも息継ぎするように調整相場に入ったりするサイクルが訪れます。
マーケットのサイクルとは以下のことです。
(資料:楽天証券)
マーケットには4つの局面があり、最も避けたいのは第4ステージの下落局面です。
もう一度先ほどのチャートを乗せます。
トレンドを割ってしまっている訳ですから、これから第4ステージの下落局面入りする可能性は十分にあります。
冷静に考えれば1の直ぐに損切りするのが正解だと思います。
確かにチャートとファンダメンタルズを見て総合的に判断するのは難しいです。
私はチャートとファンダメンタルズを五分五分で見ていますが、総合的に判断する為に、長期的な見通しはファンダメンタルズを見て、短期や中期のトレンドの把握はチャートを見るようにしています。
そして、チャート上では「絶対的な節目」を決めて、その節目を割ってしまった場合は如何なる時も損切りをするようにしています。
このチャートの場合の絶対的な節目はトレンドラインになります。