アメリカの労働、価格、ビジネス、消費はどうなっているのか?
現在の株式市場は高止まりして、高値圏でもみ合いが続いている。
チャート上ではアイランド・リバーサルを形成しており、相場が下がる方に賭ける、いわゆる空売りポジションも増加している。
直接的な原因となったのは新型コロナウイルスの感染第二波による懸念だ。
新型コロナウイルスの症例は上昇、経済の再規制を行なう州もある。
今後の株式市場はどのようなシナリオが有力なのか?
それを占うためには今あるデータをしっかり精査する必要がある。
今あるデータというのは金利や中銀のバランスシート、後は労働、価格、ビジネス、消費の統計だ。
米10年債利回り
米10年債利回りは低い金利を継続中。
株価は金利が低ければ低いほどいいが、同時に低い金利というのは国債が買われているということなので総合的なファンダメンタルズは弱気に傾いている可能性がある。
FRBのバランスシート
FRBのバランスシートは7113208.00と増加傾向にある。
言うまでもなくFRBは最大規模の金融緩和政策を行なっており、これは株式市場にとってプラスだ。
失業率
失業率は13.3%と高水準だ。
労働市場はアメリカ経済の要であり、失業率が落ち着きを取り戻さない限り、今後の強い経済成長は見込めない。
消費者物価指数
消費者物価指数は歴史的に見ても低い水準だ。
現在は0.1でいわゆるデフレの一歩手前ということになる。
製造業PMI
製造業PMIは経済再開をしてから急回復、しかし節目50は突破できず、次回の発表で節目50の突破が出来ればサプライズだ。
消費者信頼感指数
消費者信頼感指数は78.9とやや持ち直している。
依然として低水準だが消費マインドが回復しつつあることを示唆している。
まとめ
統計を見てお分かりの通り、株価と経済業績は大きく乖離している。
公的な支援により株価は高い水準を維持できているが、高い失業率やデフレリスクが高まっているところを見ると株高がずっと続くということは非現実的だ。
だからといって悲観しすぎることはアップトレンドのチャンスを逃してしまう。
私が考える最も有力な対処法としては国債や金などにも投資して中立的なポートフォリオを組むことが有力だと思う。
アメリカ経済は活発化を示唆?急いでGDP予想を引き上げるエコノミスト
経済再開でモノの生産や雇用が回復し始めて、今後経済活動が活発化する可能性がある。
12日に発表された6月消費者信頼感指数は78.9と前月と比べて6.6ポイント回復、依然として新型コロナウイルスの感染が拡大する前よりは低いものの、底打ちの兆しが出ており、消費マインドの回復を示唆している。
18日に発表された6月製造業景況感指数は+27.5と前月と比べて70.6ポイント上昇、予想外のV字回復となった。
製造業景況感指数は「前月と比べての受注と出荷」をアンケート調査したもの。
数字の出し方はとてもシンプルで速報性が非常に高いデータだ。
経済の活発化の兆しが見えてきたことにより、エコノミストは2020年4-6月期以降のGDPの予想を引き上げている。
1カ月前までの大方な予想は年率マイナス40%やマイナス49%、マイナス50%と弱気な見方が多かったが、現在はマイナス40%~30%の間で予想するエコノミストが増えている。
そして、2021年には2019年10-12月の水準に戻るという声が強い。
S&P500指数の現在のPER(株価収益率)は19.8倍と割高水準
割高と一言でいっても「売り」ではない。
なぜなら良い環境に置かれているマーケットというのはいつも割高だからだ。
注目が集まるロビンフッダーの動向
若い世代に人気な株アプリ「ロビンフッド」は売買手数料無料化の先駆けとなり、2020年1-3月期に300万件の新規口座が開設され、取引額も急増している。
ロビンフッダ―(ロビンフッドで売買するトレーダー)の存在に注目が集まるようになったのは、米レンタカー大手ハーツが破産申請をした直後、ロビンフッダーがハーツ株を買い支えて、新株売り出しが現実味を帯びてからだ。
ロビンフッダーはスマートマネーに属するヘッジファンドやミューチュアルファンドが見放した株に注目している。
ハーツやアメリカン空港、デルタ空港、ラッキンコーヒーなど問題を抱える株など積極的に投資している。
なぜロビンフッドで個人投資家の売買が増加しているのか?
1. 株式売買手数料の無料化
2. 新型コロナウイルス規制により時間に余裕がある個人が多い
3. 給付金(株に回している)
4. カジノなどの施設が休止している
上記4点が要因になっている可能性がある。
ロビンフッドを利用している友人によると
『アプリで簡単売買出来て、お勧めの株をピックアップしてくれる。投資初心者にとっても敷居は低いと思う』
初心者でも手軽に投資できるという点など人気な理由が覗える。
株式市場のこれまでの歴史から見て、個人投資家の売買が活発化することは好ましいとは言えない。
過去の金融危機は個人投資家の「投機熱」をピークに起きている。
なぜなら活発的な個人投資家の売買はマーケット全体で銘柄入れ替えが激しくなり、不安定な相場を作り出すことが多いからだ。
最も有力なゴールデンクロスと、最も恐ろしいデッドクロスとは?
ゴールデンクロスやデッドクロスと聞くと一般的には短期、中期移動平均線のクロスやMACDなどのクロスを指すと思います。
ただし、これらのサインはダマしに終わることも少なくないため過信し過ぎるのも禁物です。
私が有力だと思うゴールデンクロスと、最も恐ろしいデッドクロスがあります。
それは対照的なポジション、つまり個人投資家のポジションとヘッジファンドやミューチュアルファンドのポジションがクロスした時です。
グラフを使って説明します。
赤い線がヘッジファンドやミューチュアルファンドのポジション、青い線が個人投資家のポジションになります。
Aではヘッジファンドは買い越しですが、個人投資家は売り越しです。
個人投資家は逆指標ということで、これは典型的な買いシグナル、いわゆるゴールデンクロスになります。
Bではヘッジファンドは売り越しですが、個人投資家は買い越しています。
これは恐ろしい有力な売りシグナルになるケースが多いです。
これらのシグナルを受け取る方法は幾つかありますが、その中でも最も簡単なのは出来高を使った方法だと思います。
こちらのチャートはS&P500のETFです。
Aを見て頂くと相場は右肩上がりなのに対して、出来高は減少しています。
つまり、個人投資家が買い越しているのに対して、ヘッジファンドは売り越しているという見方が出来ます。
その後、赤い矢印の部分で少し下げてギクシャクしています。
Bを見て頂くと相場と出来高が共に右肩上がりとなっています。
Bは個人投資家とヘッジファンドが共に買い越していますが、個人投資家より早い段階でヘッジファンドが相場から降りるデッドクロスがこの先起きる可能性があります。
以前にアメリカの中流階級層で株取引をした人が給付金支給前と比べて約90%増加したことが報じられています。
1929年世界大恐慌前にジョセフ・ケネディはこのような言葉を残している。
『普段株をやらない層が株取引に興味を持ち出したことを知って私は株を全て売った』
果たしてこの先、長期相場を揺るがすデッドクロスが起きるのでしょうか?
上昇要因を調べることは意味がない?
S&P500は今週に入って3.67%上昇している。
S&P500に投資している、もしくは投資を検討している投資家は「なぜ株はこんなにも強いのだろう」と上昇要因を一生懸命探している人が多いと思います。
『株が強いのはワクチン開発が順調だからだ』
『株が強いのは連銀が買っているからだ』
『株が強いのは金利が低いからだ』
『株が強いのは経済がV字回復へ向かっているからだ』
『いや、株が強いのはワクチン開発が順調で、連銀が株を買っていて、金利が低くて、経済がV字回復へ向かっているからだ』w
このように株が上昇する要因はいくつもあり、どの要因で株が上昇しているのか、ということを知ることはできません。
そして、上昇要因を知ったところで何かが変わるのでしょうか?
今週のS&P500は200日移動平均線を突破しています。
私からすれば株の上昇要因よりもずっと大事なのはレジスタンスのブレイクアウトなど株の値動きです。
多くの投資家は値動きの「要因」を知りたがる傾向にあります。
しかし、物事を簡素化し過ぎて、要因だと思われる要素は大して重要ではないケースの方が多いことも事実だと思います。
デイトレードでリズムを掴むには?
SentimenTraderが株式市場で個人投資家の取引が活発化しているというデータを発表しました。
多くはデイトレードです。
日本でもデイトレードをしている個人投資家は多いと思います。
しかし、90%のデイトレーダーは失敗に終わるというデータが出ている。
実際に年間通して利益を上げているデイトレーダーは2%未満です。
厳しいデイトレードのデータの背景に二つの要因があると考えています。
⑴ 利食いが早く、損切りが遅い
⑵ 個人投資家のトレードタイミングがパターン化されている
この2つの要因が個人投資家のデイトレードの戦績を悪くしている可能性があります。
⑴ は個人投資家の典型です。利食いが早いことは損失に対して「過剰な恐れ」であり、損切りが遅いことは「愚かな希望」です。
これらの行為を客観的に見ると、気づかぬうちにしてしまう「馬鹿な行為」です。
⑵ のトレードタイミングのパターン化はとても危険です。市場を動かしているのはヘッジファンドなど投資のプロと言われますが、市場に流入している資金量は個人投資家が圧倒的に勝っています。
なぜ、個人投資家はヘッジファンドなど投資のプロに勝てないのか?
なぜ、個人投資家は「逆指標」とバカにされるのか?
それはトレードがパターン化されており、自ら逆指標になっているからです。
個人投資家は大波に乗ることを好みますが、「大波」だと思う頃には相場はピークを迎えます。
つまり、個人投資家が買うタイミングというのはヘッジファンドが売るタイミングです。
そのため「大波」に乗るには「大波だと気づかない」頃に投資しなくては大波に乗ることは出来ません。
「買ったら相場が下がり、売ったら相場が上がる」という現象はタイミングに対する考え方が間違っているということです。
デイトレードというのはタイミングが重要です。
デイトレードでどのようにリズムを掴めばいいのか?
例を二つ挙げます。
チャートはペナント持ち合い相場のブレイクアウトです。Bの部分でブレイクアウトしています。
多くの個人投資家はBで買います。
Bで買って、その後相場が戻してしまった経験はないでしょうか?
相場の戻しで損切りして、損切りしたら相場が上がる…
これだとリズムを掴むことはできません。
私がデイトレードをする時には「今が買いだ!」思ったタイミングで買わずにワンパターンずらします。
この相場だとBのブレイクアウトで買うのではなく、Aの高値で止まったCで買います。
チャートはレンジのブレイクアウトです。Aの部分でブレイクアウトしています。
Aのブレイクアウトで買うことが一般的です。
しかし、その後ダマしにあっています。一般的なトレードだと相場の戻しでレンジ内に戻ってしまっているので損切りです。
先ほどの例と同じように損切りしたら、再び上がってしまった…
リズムを掴めていません。先ほどと同じやり方でAのブレイクアウトで買うのではなくBで買います。
ワンパターンずらしてトレードすることにより相場を長く見ることができて、個人投資家の「死のタイミング」に被らないでトレードすることができます。
もちろん、これはデイトレードに限った話でスイングトレードや長期投資においては細かなタイミングは重要視されません。
ドルのボラティリティーサイクルと金融緩和
中央銀行は毎回、景気後退でドルを刷って、債券を購入して金利を下げている。
これらのサイクルはバランスシートを膨らませることになる。
金利引き下げや量的緩和により市中金利は大幅に低下している。
米10年債券利回りは初の1%を下回る水準まで低下、FRBはマイナス金利に踏み込まないことを示唆しているが、今のところ反発の兆しはない。
低金利や緩和資金の流入を好感して株価は大幅上昇となっている。
それではドルはどうだろうか?
ドルのボラティリティーサイクルと金融緩和は深い関係にある。
ドルインデックスに入っている黄色いチャートはVolatility Index。
これまでQE後の相場を振り返ってみると、QE後は必ずドルのボラティリティーが低下していることが分かる。
今回新型コロナウイルスによってFRBは大規模かつ無制限のQEを実施しており、過去最大規模で幅広い債券買い入れは市中金利を押し下げ、今後、ドル相場のボラティリティーは大幅に低下する可能性がある。